泣g》を廻転する仕掛になっていた。従って、その装置は、戦車などに使う無限軌道のように作られていて、奈落から天井を振り仰ぐと、二重に作られている調帯の中央に、一つ大きな、函様のものが見える。
それが、オフェリヤを沈ませる装置であって、最初幡江がその函の中に入ると、下には扇風器が設けられてあって、その風のために、水面に浮んだような形で、裳裾が拡がる。そして、廻りながら、腰を落して行くので、てっきり観客の眼には、泥の深みへ、はまり込んで行くように見えるのだった。
幡江はそれが終ると、扇風器の上にある、簀子の上で仰向けになって、きっかけを、下の道具方に与える。と今度は、調帯が幡江を載せたまませり上って行って、その儘前方の、切り穴から奈落に落し込むのである。
所が、血の滴りは、調帯の恰度中央辺から始まっていて、最初の切り穴からそこまでの間にはなかった。それを見ても、幡江が刺された場所は明白であり、その高さも、六尺近いものなら、し了《おわ》せるだろうと思われた。けれども、兇器は何処《いずこ》を探しても見当らず、血痕も、調帯《ベルト》の後半以外には皆無だった。尚、当時奈落には、二人の道具方がい
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