鉾にこしらえてきた。寛文年間の、高橋板の料理物語のなかにも鯰蒲鉾のことについて書いてあった。
鯰は、一年中いつでもおいしいのであるが、これから寒さが加わってくると、その味には次第に旨みを加えてくる。最もおいしいのは、そぎ身であろう。殊に、鰻と同じに胴から下方の尻尾に近い間が珍重されるのである。まず三枚におろして、包丁で薄く身をそぎ、それを冷水に浸けて揉み、酢味噌で頂戴すると、その淡白なにものにも比ぶべくもない。
蒲焼きもよい。脂肪をあまり好まぬ人には鰻の蒲焼きよりもこの方が舌に合うかも知れぬ。頭を去って三枚におろし、それから鍋に醤油、砂糖、味醂を加味してすっぽん煮に作ると、これは婦人や子供に歓迎される。中華料理では煎鮎魚といって、まず鯰の腹を割き、汚物を去り皮を剥ぎ、身を薄く長さ一寸五分ほどに切り、胡麻油四勺、酒六勺、醤油五勺、白湯五勺、葱二本を細長く一寸位に切ったもの、生薑《しょうが》の刻んだもの二匁を材料とし、まず鍋に油を沸《たぎ》らせ、鯰の肉を入れて時々箸で裏返し、約三十分間ほど強火で炒り、それから酒やその他の材料を入れて蓋をし、一時間ばかり文火《とろび》で煮てから碗に入れて
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