、火成岩や火山岩に発する水には、鮎が常食として好む良質の硅藻《けいそう》、藍藻、緑藻などが生まれぬためであろうと思う。
それに引き替え、北山川の水を慕う鮎は、まことに立派な姿と香気とを持っているのである。河相の合流で見れば明らかに区別されるように、十津川の川底の石は灰色に小型で、粗品であるのに、北山川の石は大きく滑らかに、青く白く淡紅に、この川の上流である吉野地方一帯に古成層の岩質が押しひろがっているのに気づくであろう。
また十津川の鮎の腹には小砂が入っているけれど、北山川の鮎の腹には砂がない。やはりこれも、岩質からくる関係であるかも知れぬ。
北山川は、木津呂、下瀞、上瀞をへて次第に上流へ遡るほど、鮎の姿も味も香気も立派になるのである。さらに、三重県東牟婁郡七色方面まで遡れば、鮎は七、八十匁の大きさに育ち、七月の盛季には、背や頭の細かい脂肪がほどよく乗って、塩焼きにも、刺身にも天下の絶品のうちに数えられる。
六
伜も、ちかごろ友釣りのわざがなかなか巧くなった。熊野川では親に負けないほどの成績をあげたのであった。
この子に、はじめて友釣りのわざを教えた場所は、常陸国久
前へ
次へ
全32ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐藤 垢石 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング