え。
 あら、ほんとなんですか。
 心、心に通ずるのは、ここである。そこで、二人は固く偕老《かいろう》を約して別れた。
 仙公狸は、有頂天になった。いよいよ、わが意図もその緒についたわけか。まず、これを親友の※[#「豸+權のつくり」、第4水準2−89−10]《あなぐま》に報告して、彼を喜ばせねばなるまいと考えて一両日休学して水沢の九十九谷へ走って行った。
 ※[#「豸+權のつくり」、第4水準2−89−10]さんいるかい。
 いるよ。
 眼を丸くし、大きなお尻を振りながら、※[#「豸+權のつくり」、第4水準2−89−10]は穴の奥から、入口の方へ出てきた。
 久し振りだね。あまりたよりがないから、ことによったら貴公、人間に尻っ尾を押さえられ打ち殺されたのじゃあるめえかと思って、この四、五日烏啼きの様子ばかり気にしていたのだ。まあ、息災の顔を見てよかった。はいれ、はいれ。
 とんでもねえ、元気だ。めったなところで、尻っ尾を出すような仙公じゃない――。安心してくれ。
 そうか、そうでなくては叶わん。ところで、貴公の青年振りは素敵に立派なものじゃの、あく抜けがしているわい。
 さもあるべし。先
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