、僕の村の駅館川に産するのが一番上等とされている。背の甲が蒼《あお》黒く、そして肌の底から鈍い黄金色の艶が浮かび出し、腹の甲は一帯に黄色を呈しているのを絶品としている。これは駅館川ばかりでなく元田肇翁の生まれた国東半島の方にも産するが数はあまり多くない。
北九州から、中国方面に産するすっぽんは、少し背の模様が違う。背の甲に灰色の丸い斑点が散在している。これは、金色のすっぽんに比べると味が劣る。朝鮮から満州方面のものは、背に白い筋があって、誰が見てもこれは内地のものと違うのが分かる。背中の模様から考えると、北九州と中国産のすっぽんは朝鮮、満州のものと縁が近いように思えるが、太古日本と大陸とは地続きであったことを、これが物語るのではあるまいか。
朝鮮と満州産は内地のものにくらべると、素敵に味が劣って価値も半分もしない。いま市中のすっぽん料理店で使う品はこの大陸産のものか、養殖ものであるから、おいしいすっぽん料理が容易に口に入らないのは当然である。僕は、若い時からすっぽんが好きで、土地の漁師が捕ってきたものは時季を選ばず買っているが、数多くとれた時は、庭の池へ放して活かして置いた。
と
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