か聞きました。
冬の夜風が強く吹いて、土の底までも凍りそうな折には、狐が出て遊ぶといわれます。畦《あぜ》をつたって走りながら鳴くので、それで声がとぎれとぎれだというのでした。そんな晩は、蒲団《ふとん》を頭から被って、小さくなって睡《ねむ》ります。夏の夜は蛍が飛びかいますが、誰も気に止めません。
診察室の次の間に、父の机がありました。古い大きな机で、両側に幾つも引出しがあります。国から持って来ましたもので、調合台に使用するので広く場所を取りました。上には、筆硯《ひっけん》は片隅で、真鍮《しんちゅう》の細長い卦算《けいさん》が二、三本と、合匙《ごうひ》といいますか、薬を量る金属の杓子形《しゃくしがた》のが大小幾本もありました。小さい四角に切った紙を順に列《なら》べ、卦算を圧《おさ》えにして、調合した散薬を匙《さじ》で程よく分配するのです。終れば片端から外して折畳むのですが、よく馴《な》れていて、見ていると面白いようでした。幾つかを重ねて袋に入れて、患者の名を書きます。水薬の方は、傍らに三尺の棚があって、大小さまざまの薬瓶や壺などが置いてあり、その下で調合するのでした。書生などはいません
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