した。狸《たぬき》や狐《きつね》などを、上手《じょうず》にひねって造ります。それに赤や青の色を塗り、棒に附けて並べます。大抵の子供は、丸い桶《おけ》に入れてある水飴を、大きく棒に捲《ま》いてもらうのです。色は濃い茶色をしていて、それがなかなか堅くて溶けませんから、子供には長く楽しまれるのでしょう。或時よその年寄が来て、立話をして帰るのを、母が送って出ましたら、門の際の生垣に挿してあった飴の棒を抜いて、しゃぶりながら行ったので呆《あき》れたといわれましたが、そんなに堅いのです。
家の中は押入が多くて、よく片附いていました。床《とこ》の間《ま》は一間《いっけん》で、壁は根岸《ねぎし》というのです。掛軸は山水などの目立たぬもので、国から持って来たのですから幾らもありません。前には青磁《せいじ》の香炉が据えてあり、隅には払子《ほっす》が下っていました。
兄が家にいられる時の机の上には、インキ壺、筆、硯《すずり》、画筆に筆洗などがあり、壁際には古い桐の本箱が重ねてありました。折れ曲った所のれんじ窓から、裏庭を越して田圃が見渡されます。遥《はる》か先に五代目|菊五郎《きくごろう》の別荘があると
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