みし》のようで、熟した実は赤黒くて、形は蒸菓子《むしがし》の鹿《か》の子《こ》そっくりです。飯事《ままごと》に遣います。蔓《つる》は皮を剥《む》いて水に浸すと、粘りのある汁が出て、髪を梳《くしけず》るのに用いられるというので美男葛の名があるのでした。一に葛練《くずねり》などともいいました。
 地境の井戸はよい水でした。傍らに百日紅《さるすべり》の大木があって、曲りくねって、上に被《かぶ》さっています。母が洗い物をしていられる時、花を拾ったり、流しから落ちる水に蛙《かえる》がいるので、烟草《タバコ》の粉を貰って来て釣ったりします。花のある間が長いので百日紅といいます。
 裏庭の梅林に小さな稲荷《いなり》の祠《ほこら》のあるのを、次兄が、開けて見たら妙な形の石があったというので、祖母にひどく叱《しか》られました。祖母は信仰も何もないのですが、昔気質《むかしかたぎ》ですから、初午《はつうま》には御供物《おくもつ》をなさいました。先住は質屋の隠居だったといいますから、その頃にはよく祭ったのでしょう。梅の盛りの頃には、花の間から藁《わら》屋根の見えるのがよい風情《ふぜい》でした。軒には太い丸竹の
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