ったの。」
 兄はこれを聞いて、「では、己《おれ》のせいだったかな」と笑っていられました。
 その写真が今あったらと、昔がなつかしく忍ばれます。
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   垂氷

 知人が持って来てくれた菖蒲の花を見て、遠い昔|向島《むこうじま》の屋敷の隅にあった菖蒲畑を思出しました。そこは湿地のためか育ちがよくて、すくすくと伸びますので、御節供《おせっく》の檐《のき》に葺《ふ》くといって、近所の人が貰《もら》いに来るのでした。根を抜くと、白い色に赤味を帯びていて、よい香がします。花は白、紫、絞《しぼり》などが咲交《さきまじ》っていて綺麗でした。始めに咲いて凋《しぼ》んだのを取集めると、掌《てのひら》に余るほどあります。畑はかなり広いのでしたから、それを取って染物をするのだなどといって、そこらを汚しては叱《しか》られたものでした。菖蒲じめという料理があります。ほのかな匂《におい》をなつかしむのです。
 菖蒲畑の側にある木戸から、地境《じざかい》にある井戸まで、低い四《よ》つ目垣《めがき》に美男葛《びなんかずら》が冬枯もしないで茂っていました。葉は厚く光っており、夏の末に咲く花は五味子《ご
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