した。
幾分古びた西洋|造《づくり》の家の入口を入りますと、幸いに外に客はありませんかった。
「この子を写して遣《や》ってくれ」とおっしゃいます。
「お兄様は」と聞きますと、「己《おれ》は嫌《いや》だ。」
いつにないむつかしい顔をなさるのです。どうしようもありません。
そこらにある写真を見ている中に、助手らしい人が出て、光線の工合を見るのでしょう、高いところの幕を延ばしたり巻いたりします。椅子《いす》の際に立たせて、後頭の辺を器具で押えます。気持の悪いこと。
そこへ五十|過《すぎ》くらいの洋服の人が出て来ました。主人でしょう。黒い切《きれ》を被《かぶ》って、何かと手間取《てまど》ります。
やっと終ってそこを出る時、「これから仲見世《なかみせ》だ、何でも買って遣るよ」とおっしゃるけれど、私はむっつりしていました。お母様と一緒だったのなら、きっと泣いたでしょう。何ということなしに窮屈なのです。大事なお兄様が優しくして下さるのに、偏屈な性質だから仕方がありません。
「何が欲しい」といわれても返事が出来ません。何もいらない、といいたいのを我慢していました。それでも仲見世にはいろいろ並
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