って棒か何かで打つのだそうで、女の泣く声が嗄《か》れがれになる頃、そこに捨てて置いたまま、半日も過ぎた頃に出すのです。娼妓がまだ髪もあげず、泣き腫《は》れた顔も癒《なお》らぬ位なのに、店へ出すとすぐ売れますとさ。不思議ではありませんか。」
 お母さんは、「まあ、むごいことを」といって、眉《まゆ》を顰《しか》めていられます。私は可愛そうだとは思いましたが、絵本で見た中将姫の雪責めなどを幻にえがくのでした。
 この小母さんは独身で、家も小ざっぱりして、奥の間を漢学の先生に貸し、針手が利くので仕立物をして、どこへも立ち入っているのでした。
 或時|手狭《てぜま》な家でお客をする事になったのです。お客はお医者仲間が二、三人、あとはお父《と》うさんがお世話になる、士地での旧家の主人や隠居たちです。父はお世辞のない人ですから、こんな土地の人気《じんき》には合いません。その気性を呑《の》み込んで何かと面倒を見て下さる人たちを、お礼心《れいごころ》に招いたのでしょう。
 その日は患者の方は早じまいにして、テーブル、椅子《いす》、寝台などを書生たちに片付けさせ、掛物をかけ、秘蔵の鉢植を置きましたら、家は
前へ 次へ
全292ページ中62ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小金井 喜美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング