見違えるようになりました。奥の二間の襖《ふすま》をはずすと十八畳になり、広々となったのでした。書生たちは遊びに出しました。支度が調《ととの》った頃にはお兄様もお帰りです。料理は、好いという遠くの家からの仕出しです。ただ給仕《きゅうじ》をする女手が足りないのに困りました。
その頃土地で美しいといわれる芸者が二人いました。小六、小藤といいました。小六は物静かな女でした。「私は先生に見て頂きたいから」といって、ちょいちょい家へ来て、診察順を待つ間に、母ともお馴染《なじみ》になって話すのでした。父はいつも代診をやって、青楼やそんな家へは決してまいりませんから。それが家で客をするのに女手がないと聞いた時、「私がお手伝《てつだい》にまいりましょう。いつも先生のお世話になっているのですから」と申出ました。
父は笑って、「それは有難う。立派な御馳走ではないが、お酌がよいとお客が喜ぶだろうから」といいました。
小六は早くから、少し年増《としま》の芸者と十二、三の雛妓《おしゃく》と一緒に来て、お茶を出したりお膳を運んだりするのでした。きっとこの人たちは同じ家にいるのでしょう。お客たちは上機嫌で、「い
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