ます。宅で毎日弁当に入れるものですから、一緒に作ります。いつも礼状はよこされましたが、お好きでしたか、どうですか。母は自分の好物だといって、葉蕃椒《はとうがらし》の佃煮《つくだに》などを送られましたが、きっとその方がよかったでしょう。
 漬物もよく上りました。野菜の多い夏が重《おも》です。茄子、胡瓜《きゅうり》の割漬、あの紫色と緑色とのすがすがしさ。それに新生薑《しんしょうが》を添えたのが出ると、お膳の上に涼風が立ちます。茄子をいつも好い色にと思うと、なかなか気を附けねばなりません。若い白瓜《しろうり》の心を抜き、青紫蘇《あおじそ》を塩で揉《も》んで詰めて押したのは、印籠漬《いんろうづけ》といって喜ばれましたが、雷干《かみなりぼし》は日向《ひなた》臭いといって好まれませんかった。
 冬の食物に餅茶漬《もちちゃづけ》というのがありました。程よく焼いた餅を醤油に浸《ひた》して、御飯の上に載せて、それにほうじ茶をたっぷりかけるのです。それに同感されたのは緒方収次郎《おがたしゅうじろう》氏で、この味の分らぬ人は話せぬ、といわれたそうです。大阪辺でもそんな風習がありますかしら。賀古《かこ》氏は、
前へ 次へ
全292ページ中57ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小金井 喜美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング