ことは人があまり知らずに、小魚などといいますが、鰻のごく細いのです。それは肴屋《さかなや》でなくて、八百屋《やおや》が持って来ました。開いて串に刺して、白焼《しらやき》にしてあるのを辛味《からみ》に煮て入れますが、いつまでも飽いたといわれませんのは、きっと油濃くないからでしょう。見ている私は浅草海苔《あさくさのり》をざっと焼いて、よいほどに切って、握飯を包むのでした。何かの都合でお弁当が残った日などは、弟が喜んでいただきました。
 野菜は夏がよいので、茄子《なす》、隠元《いんげん》など、どちらも好まれますが、殊《こと》に豌豆《えんどう》をお食べになるのが見ものでした。高村光太郎《たかむらこうたろう》氏も、随筆で見ますと、豌豆を好まれるようですが、自炊なさるので、筋を取って塩茹《しおゆ》でにしたのを、油や酢で召上るのだそうです。兄のは少し実の入った方がよいので、筋は全く取りません。取れば実がこぼれますから。それを味よく薄目に煮たのを、壺形《つぼがた》の器に入れて膳《ぜん》に乗せます。その豌豆の茎を撮《つま》んで口に入れ、前歯でしごいて、筋だけを引出します。幾度か繰返して、筋だけを器の端に
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