好みました。そんな時兄も相伴《しょうばん》をなさいますが、「自分には中串《ちゅうぐし》を」と必ずいわれました。あまり好物ではないらしいのです。
牛乳だけはお嫌いのようでした。その頃はまだ手軽にコーヒーも手に入らず、毎朝の出勤前にお飲みになるようにと母がいろいろ苦心をなすって、ブランデーを入れて見たり、砂糖と葡萄酒《ぶどうしゅ》とを入れたりなすってもあまり召上らず、お出かけの跡に色の附いた牛乳が、お机の傍に手附かずにあるのでした。
弁当の握飯《にぎりめし》のことはいつも話に出るのですが、毎朝母がそれを作られるのを見ますと、焚《た》き立《たて》の御飯を手頃の器に取って、ざっと握って皿に置きます。それに味附けした玉子を入れるのですが、その玉子の中に花鰹《はながつお》を入れます。醤油《しょうゆ》ばかりで、砂糖は殆《ほと》んど使いません。玉子はあまり強く炒《い》らずに、前に結んである握飯の間に挟んで結び直します。始めになぜ器に取るかといいますと、熱いのと、一定の量にするためとです。握飯はいつも二つでした。一つには玉子を、今一つにはめそ[#「めそ」に傍点]を入れます。めそ[#「めそ」に傍点]の
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