かうえ》の夜、公余に編輯《へんしゅう》を続行せし当時を思へば感慨未だ尽きず。
本書の編輯に際して、今は世に珍らしきものとなれる小金井家所蔵の『めざまし草』『芸文』及『万年艸《まんねんぐさ》』の完本、並に友人|竹友虎雄《たけともとらお》君所蔵の『しがらみ草紙』の完本を借用し得たることは、如何ばかりか編者の労を軽減したりけん。しかも前者の我蔵本に交りて倶《とも》に焼けしは、我最も憾《うらみ》とする所なり。
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 こんなに書いてありますが、それは平野氏の覚え違いで、私のが『しがらみ草紙』なのでした。種々苦心してお集めになったように聞いた蔵書を全部お焼きになったのですから、私のもお相伴《しょうばん》をしたとて愚痴を申すわけにもまいりませんが、それから多くの年月を経た今でも、何か見たいことがあると、平野氏が本を持って門をお出になった後姿を思い出します。
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   レクラム料理

 兄は食物では新しい野菜を好まれましたが、全体にひどい好き嫌いはないようでした。千住に住んだ頃は、川魚が土地の名産なので、市中からの来客にはいつも鰻《うなぎ》を出しますし、誰もがそれを
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