今度出て来た費用の足しにでもと、金を包んで出しましたら、何ともいわずに取りました。よほど手元が苦しいのでしょう。帰りの汽車賃もないのかも知れないと、可哀そうになりました。
 その月末に送金しましたら、先月はお世話様になりましたと、礼をいってよこしたので、無事にいたかと安心しました。それから一年ほど過ぎて、連合《つれあい》の亡くなった由を知らせて来ました。志を送りましたら、その返事に、これで私も安心して逝《ゆ》かれます、としてありました。
 その秋地方に流行性感冒の蔓延《まんえん》しました時、はつは年は取っても元気を出して、あちこちの看病に雇れていたのですが、とうとう自分も感染して、年寄の流感で、それなり逝《い》ってしまいました。好い性質の人であり、勤勉でもあったのに、不遇の一生だったのが気の毒です。
 香奠《こうでん》を送りましたら、弟からの便りに、長年世話になったことの礼を述べ、終り間際にもお宅のことばかりいっていて、あなた様方の御寿命の長久を祈りますと遺言して、安らかに息を引取った、としてありました。
 私はすぐに母の仏壇に線香を上げて、「お話相手が行ったでしょう」といいました。

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