行きます、という便《たより》がはつからあったので、それもよかろう、あの目の悪い人と東京で暮すのでは骨が折れようからと思いました。
それからはつのことも、忘れるともなく忘れて時が立ちましたところ、久しぶりに尋ねて来たのを見ますと、小ざっぱりした様子はしていますが、元気がありません。
「お暇乞《いとまごい》にまいりました」といいます。
「どこへ行くの」と聞きましても、すぐには答えずに黙っています。涙ぐんでいる様子です。
「実は死ぬつもりです。」
はつがそういったのに、私はびっくりしました。あまりに落附いて、静かな声でいうものですから、聞違えたのではないかと思って、問返しますと、はつは事情を話しました。
「田舎は田舎で暮しにくく、父も亡くなって弟の所帯となってからは、世話になるのも気の毒ですし、今後どうという見込《みこみ》も立たないのですから、人にあまり迷惑をかけない内にと思います。娘が尋ねて来てくれましたが、今の私からかえって助けてもらおうというのですから、どうにもなりません。それで決心いたしました。主人には、時々便をくれる従弟《いとこ》のところへ行くように、その旅費だけは用意してあり
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