しまいました。
或年の正月に、はつは年始に来ました。私は母と昼の食事をしていたところで、「私は済して来ましたから」と、離れの母の部屋で待つことにして、そちらへ行ったかと思いますと、「奥様、御隠居様」と、大声で呼立てます。
何事かと思って、廊下を急いで行って見ましたら、母の部屋の障子の隙間《すきま》から、煙が盛《さかん》に吹出しています。
「あっ」とびっくりしましたが、はつはすぐに障子を開け拡げて、縁先にあった瀬戸の大きな手水鉢《ちょうずばち》を取るなり火燵《こたつ》へ投げつけました。その一杯の水で下火になったところへ、私たちも手に手に手桶《ておけ》を持って来て、水をかけて火を消しました。母は灰を厚くかけて食事に立ったのですが、炭火がはねて蒲団に燃えついたのです。もう少し知らずにいましたら大事になったでしょう。それでも天井は幾分か焦げました。ちょうどはつが来合せて、咄嗟《とっさ》の機転で事なく済みましたが、それから母は、飛んだ失敗を悔むにつけても、はつの行動を喜んで、その話の出る度に、「忠義のはつが」といわれます。それを子供たちが笑いました。
その内に、父が亡くなったから暫く田舎へ
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