から」というのでした。青々とした剃り跡には天瓜粉《てんかふん》が一杯附けてあるので、子供は珍しそうに頭を撫《な》でていました。
 夜ほの暗いランプの光に、小さな鏡を立てて髪を結います。「暗いでしょう、昼結ったら」といいますと、「昼は昼の御用がございますから」というのでした。「そんな小さな鏡で」といいますと、「何、鼻の頭だけ映ればいいのです。あとは勘ですから。」そういって、いつもさっぱりと取上げていました。
「奥様のように、髪に手入れをなさらないではいけません」と、私の頭の雲脂《ふけ》を落したり、梳《す》いたりしてくれた上に、「少しお頭を拝借させて下さい」と、水油を少し附けて、丸髷《まるまげ》に結ってくれました。今まで私は島田《しまだ》にも丸髷にも結ったことがなかったのです。入用の品も、いつの間にか買揃《かいそろ》えて置いたと見えます。自信があるのでしょう、「御隠居様、御覧下さいまし」といいます。母も、「まあ、見違えたよ。日本人はこの方がいいねえ」といわれます。子供たちが珍しがって騒ぎます。私もまだ若かったものですから、気紛《きまぐ》れに近くの写真屋へ行って、子供と一緒に写真を撮りました
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