《てぬぐい》でよくも拭《ふ》かずに、もう前から小風呂敷に手廻りの物を包んで置いたのを取るなり、薄暗い勝手口から出ようとしました。
「暗くなるのに、まだランプを附けないのか」という亭主の声がします。
「お母さん、お母さん」と、妹の方の子の呼ぶ声もするのを後に、はつは駈け出してしまいました。それで今でも糠漬の匂《におい》を嗅《か》ぐと、子供の顔を思出すといいます。
 小学校しか出ないでしょうに、利口な女で、裁縫もしますし、洗濯洗張物《せんたくあらいはりもの》などについては、商売がら私の方で教えられることが多いのです。勝手の仕事の暇々には、庭の草取などもしてくれるので、主人も喜びますし、母はまた自分が昔畑仕事をした時のことなどを口にして、話相手にするのでした。
 置いて来た子の年頃だといって、妹の方の子をかわいがってくれましたが、その子は髪が濃くて、夏向は頭の地まで汗に濡《ぬ》れるのです。その子が或時女中部屋で長く遊んでいると思ったら、「奥様御覧下さい。これで汗もも出来ますまい」といいます。見ると頭をすっかり剃上《そりあ》げて、上はお河童《かっぱ》にしてあります。「私の子をいつもこうしました
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