でも帰ったかのように働きます。小さな女の子をかわいがるものですから、すっかりなついて負われます。
「まあ、負んぶなどして」といいますと、「大木へ蝉《せみ》が止ったようでしょう」といって揺すぶるので、「大木へ蝉、大木へ蝉」といっては取りつきます。
このはつは大宮《おおみや》在の土地でも相当な農家の娘で、町の大きな染物屋に嫁《とつ》いで、女の子二人の母親となって、もともと気性の勝った女だったものですから、一人で切廻していました。けれども亭主は善良というだけの人で、継母が一人あり、手不足だというので、継母の縁続きの少女を雇ってから、家の中にいろいろ面白くないことが起り、はつも家出をしようと思立ちました。けれども心を惹《ひ》かれるのは子供です。それも遅生れの末の子が心配になるのでした。それに引かれて一日延ばしに日を送っていましたところ、或日の夕暮に食事の支度も出来て、糠漬《ぬかづけ》を出そうと手を入れた時に、亭主は新漬がいいといい、継母は古漬がいいといういさかいが始まりました。
ああいやだ、いやだ。こんな処にいつまでもいられるものかと思ったはつは、柄杓《ひしゃく》の水を手にかけて、腰の手拭
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