《くちいれ》業という札が出ていて、いつも人が集っているのでした。引手をする女は五十くらいだったでしょうか。額の抜け上った、小形の痩《や》せた女でした。ちょっと往来に出ても、その女が若い女を連れて歩いているのに出逢います。長くやっていて信用もありますし、この辺は邸《やしき》が多くて、どこでも人を置きますので、それで忙しいのでしょう。
 そんなに手軽には雇われますが、とかく出這入《ではい》りの多いのには困りました。少し落附いて子供を見てくれるような人があったらと心懸けていますと、森の於菟《おと》さんが里子に行っていた平野という家の老婆が世話好きで、田舎の方に心当りがあるというので頼んで置きましたら、或日のこと、三十近い女が大きな荷物を男に背負わせて来ました。背が高くて、丈夫そうで、丸髷《まるまげ》を綺麗《きれい》に結っていました。それがはつでした。顔の道具も大きく、がっしりしていて、頼もし気に見えます。夜具蒲団に大きな行李《こうり》、それに風呂敷包《ふろしきづつみ》も二つ三つという荷で、それを下した時は、「お嫁入のようだね」といったことでした。
 はつは早速そこらを片附け始めて、自分の家へ
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