という訳でもありませんから、古くない慣れの少いのもあるので、絹の打紐《うちひも》を通して、中指にかけて握っているのを皆が笑いますと、自分も笑いながら、「名のある彫刻師で、いつも自作を一つ袂《たもと》に入れて、磨《みが》いていたのがあるというよ」といいます。
いつか全部に紐をつける事にしました。それからは本や新聞を見る時も、紐を指にかけて握っているのでした。睡《ねむ》っている時も手から離しません。朝目が覚めて、「どこかへ行った」といいます。顔を洗いに立つと、蒲団《ふとん》の上に転がっていました。
段々終りに近くなっては、一々品をいいますから、取りかえてあげます。見ないでも握り加減で分るのでした。やはり木魚とか種彫とか、握り工合のよいのを喜びました。「子犬」といわれて取ってあげるのは、草鞋《わらじ》に子犬が二つむつれている形でした。大きさも程《ほど》よく、ほんとに可愛らしいのでした。
終ってからそれらの品々を皆集めて、柔い裂に包んで箱に入れ、仏の前に供えて置きました。納棺の時にと思いましたが、病理解剖にするのでしたから、いよいよ埋葬の時、一つ二つ手馴れたのを入れました。地下でも相変ら
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