いてほほえまれます。それから無銘ですが、鬼の面がありました。目に金が入れてあり、上手な作と見えて、物凄《ものすご》い様でした。どちらも黄楊らしく、よい艶《つや》に光っていました。
 珍しがっていたのは、三番叟《さんばそう》が烏帽子《えぼし》を被り鈴を持っているので、持って振りますと、象牙を入れた面から舌がちょいちょい出るのです。彩色した茶摘女《ちゃつみおんな》や、能人形も少しあり、金属や陶磁器のも一つ二つありました。

 しめやかな雨の降る日、朝書斎に這入《はい》ったままあまり静かなので、そっと二階へ上って覗《のぞ》きましたら、机の上へ薄羅紗《うすラシャ》の裂《きれ》を敷き、根附を全部出して順よく並べ、葉巻をくわえて楽しそうに見ています。「おや陳列会ですか」といいながらはいりますと、それを買った時、貰《もら》った時のことなどをぽつぽつ話します。それぞれに思い出があるのです。何か一品手に入りますと、また机の上の陳列会があるのでした。
 晩年あまり外出せぬようになってからは、楽しげに愛玩《あいがん》すると聞いて、知人が一つ二つ持って来て下さる事もありました。下さる人はそれほど目利《めきき》
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