頃です。団子坂から父が来た時に、その根附を見せましたら、「小金井さんもそんな物がお好《すき》かい。家にもあったようだよ、持って来て上げよう」といわれましたが、次に来た時下すったのは鹿の角で彫った小指位の根附でした。蝦蟇《がま》仙人の立姿で蝦蟇を肩に載せています。
「これは古い机の引出しにあったので、お祖父様《じいさま》のものらしいよ。」
「それではお大事なのでしょう、戴《いただ》いていいかしら。」
「いいとも。今家にはそんな趣味の人はないから。」
 帰って来たので見せましたら、「これは面白い」とその簡素な彫を喜びましたが、そのはずです。その後何年も集めましたが、鹿の角のはそれだけでした。
 追々《おいおい》心がけては集めるのでしたが、形も小さく価格もそれほどでないので、入手しやすいのです。折々『装剣奇賞』などを見ていました。その本は初め鍔《つば》を少し集めた時に求めたので、「鉄色にっとり」などという言葉を、私なども覚えました。象眼《ぞうがん》のある品などは一々袋に入れるので、いくつも縫わせられました。古いよい裂地《きれじ》でなければといわれて、そんな品は持ち合さないので困りました。それ
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