ます。それで七月亡くなられる時は、もうお湯も召上らず、ただすやすやと息をして、一週間目に終られました。いよいよ納棺という時、お蒲団の上で足を伸したら、ちっとも小さくはありません。やはりいつもつつましやかにしていられるので、誰もが小さく思ったのでした。
御遺言にまかせて、お骨は土山《つちやま》の常明寺の祖父のお墓の傍に納めました。年が立って兄も亡くなられ、向島の墓も都合で三鷹《みたか》へ移されました。それから幾らも立たない頃に墓参に行きましたが、まだ道順もよく分らず、吉祥寺《きちじょうじ》で省線を降りてから、禅林寺まで行く道の細い流の中で障子をせっせと洗っているのを、秋も深くなったと思いながら、佇《たたず》んで見ていましたが、傍に小綺麗な百姓家があって、荒い生垣《いけがき》から中がよく見えます。ふと赤いものを見かけて覗《のぞ》きましたら、日当りのよい縁側に、よほどの年でしょうが、髪の真白な、顔の柔和なお婆さんが、真赤な袖無しを著て、一心に糸車を廻しています。庭には山茶花《さざんか》が咲き、鶏が二、三羽遊んでいて、ほんとに絵を見るようでした。そのお婆さんから、暫く忘れていた袖無しのことを
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