んで来て、附けわけるのですから、大根の切れ端はありますまい。あした大根と卸金《おろしがね》とを持って来ましょう。きょうのお見舞はきんとんです」といいますと、「甘くてもきんとんならば」とお喜びでした。
帰りに賄室《まかないべや》の前を通る時に見ましたら、間の時間なので、がらんとしていて人気もなく、小鼠《こねずみ》がちょろちょろ走っていました。廊下では繃帯をかけたり、黒い眼鏡をかけた人に多く出逢います。目の悪い人も多いものだと思いました。
退院後は大分元気を取戻されて、また元のような静かな日が続きました。
或日森の母が見えて、「お前の家の紋本があるなら見せてほしい」といわれます。宅では男紋と女紋とが木版で出来ていますので、男のは※[#「縢」の「糸」に代えて「木」、第4水準2−15−26]《ちきり》違い、女のは粟穂《あわぼ》違いです。
「女紋の方を捺《お》しておくれ」とおっしゃるので、「何になさるの」と聞きますと、「まあ、待ってお出《いで》なさい。」
程もなく三越《みつこし》から大きな箱が届きました。「何だろう」と思って開けましたら、燃立つような緋縮緬《ひぢりめん》に白羽二重《しろは
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