の鳴物《なりもの》でそこらが暗くなりますと、天狗《てんぐ》が幾つも出て来ます。皆羽根を附けていて、欄干を伝うのもありますし、宙返りなども鮮かにするのです。その役者たちは、幾日も熱心に物干《ものほし》に下りた鳶《とんび》を見て研究したのだそうです。やがて高時の側へ来て、頻《しき》りに嘴《くちばし》を動かすのは、舞を教えようというのでしょう。高時は機嫌よく立上って、「習おうとも、習おうとも」といって、天狗どもに引廻され、不思議な挙動をさんざん繰返した後に、疲れ果てて睡《ねむ》ります。怪しい気配を訝《いぶか》しがった城入道その他の人々が、廊を踏鳴らして近寄ると、天狗たちはばらばらと柱をよじ上り、鴨居《かもい》を伝わって逃散ります。そして虚空から、「天王寺の妖霊星《ようれぼし》を見ずや」と歌います。その声が聞えると、高時は正気に返って立上り、小|長刀《なぎなた》片手に空を睨《にら》みます。駈寄《かけよ》った人々が燭《しょく》を差上げ、片手を刀の柄にかけて、同じく空を見上げたところで幕になりました。
 これを見て私は、また祖母の話を思出したのです。風の冷い晩秋の頃、毎夜二、三の同僚の家へ代る代る
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