ましたけれどもう癒った。医者の勧めもあり、また箱根へ一週間ほど行きたいと思います」とのことです。
 けれども四月二日にはまた、「箱根はさっぱり湯が出ないし、ひどく物資も不足だというから、湯の出るようになるまで見合せます」といって寄越したので、どこへも行かなかったことを知りました。
 それから三、四日した四月六日の朝でした。電話がかかって来て、「脳溢血《のういっけつ》で、けさから昏睡《こんすい》状態です」というのです。
「それは大変、すぐ行きます」と、急いで支度している内にまた電話です。「唯今こときれました」と聞くなり、思わずそこに坐ってしまいました。
 生きている間に今一度逢いたかったと思うと、涙がこぼれて仕方がありません。老年になってから、十も年下の弟に先立《さきだ》たれ、四人兄弟が私一人になってしまったのですものを。
 車といっても近頃は間に合わないので、省線、目蒲線《めかません》と乗継いで行くのが、もどかしくて仕方がありません。駅を下りてからの長い桜並木は、まだ莟《つぼみ》が堅くて、籬《まがき》の中には盛りの過ぎた白梅が、風もないのにこぼれておりました。
 枕元に坐ってさし覗《の
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