草取りをせられた処です。腕まである長い手袋をはめて、頭は頂の辺が薄くなっているので、日が照ると手拭《てぬぐい》を乗せるのでした。西洋婦人の帽子が羨《うらやま》しいといわれました。そして小さな草まで抜かれます。それが済んだ後を掃くのは座敷|箒《ぼうき》です。柔かでないと隅々まで綺麗《きれい》にならぬといわれるのでした。
 そんな姿で門前までも平気で出て、駒寄せの間なども丹念に掃除せられます。私はその頃|蓬莱町《ほうらいちょう》に住んでいたのですが、借家でも庭は広くて正面に赤松の林があり、隣は墓地で大竹藪《おおたけやぶ》がありました。静かでよいのですけれど、そんなですから、ひどく草が生えます。私も土いじりが好きですから、よく草取りをします。母が来られると、「御覧なさい、草取りをしました。綺麗になったでしょう」と申します。母は笑って、「こんなでは駄目だよ。すぐ伸びるから。私のは毛抜で抜くようにするのだから」と御自慢です。あの『十六夜日記《いざよいにっき》』で名高い阿仏尼《あぶつに》が東国へ下る時に、その女《むすめ》の紀内侍《きのないし》に貽《のこ》したといわれる「庭《にわ》の訓《おしえ》」一
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