。郷里の若い娘の勤口《つとめぐち》の世話を頼まれましたが、幸いに知人に電話交換局の人があって、そちらへ世話をしてくれました。交換手なのですが、先方へ線を繋《つな》ぐ時、声が漏れて来るのを耳にしますと、お嬢さんが友達を誘って遊びに行く打合せをしたりするのを、田舎者だものですから、大胆なことかのように来て話すのでした。
 兄の家では、役所との関係もありますので、大分早く引かれましたが、先方からかかって来れば格別、あんまりお使いにはならなかったようでした。万年筆がお嫌いだったように、新しいものはあまりお好きではないのです。そういう点ではかえって母の方が進んでいて、「そちらに電話がないと不便だから引いておもらいなさい。私が病気になった時に、早く知らせたいと思うから」などといわれました。
 兄は電話での応対なども下手《へた》でした。電話へ出ると、平常と違った切口上《きりこうじょう》になるのでした。兄は数学というものが不得手なので、電話番号が覚えにくいらしく、何かの字を当てて覚えようとなさいます。譬《たと》えば親戚や自宅の電話番号なども、六七四というのを空(むなし)と覚えるという風で、自宅の二五七
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