古、緒方の二氏と兄とは、学生時代三角同盟といわれて、いつも行動を共にするのでしたから、お二人とも向島や千住の家へも来られ、泊りなどもなさったので、皆お親しくしていました。いつでしたか、緒方氏が有馬《ありま》土産だといって、筆の柄を絹糸で美しく飾ったのを下すったのが、ひどく嬉《うれ》しかったことを忘れません。そんなわけで、自然家庭の御様子なども知りました。賀古氏は四角な赭《あか》ら顔の大男でしたのに、緒方氏は色のあくまでも白い貴公子風の人でしたが、親孝行なのがよく似ていられました。「雁」に書いてある岡田という青年は、オカダ、オガタという音が似ていますから、その人のようにも取れますが、これは兄の理想とする標準的な青年を写して見たのでしょう。実は「雁」よりも、「ヰタ・セクスアリス」に書いた児島十二郎というのが緒方氏そのままです。卒業の宴会が松源《まつげん》という料理屋であった時、下谷《したや》一番といわれる美しい芸者の持って来てくれた橘飩《きんとん》を、その女の前でゆっくり食べていたというのがその頃の語り草となっていて、幼かった私の記憶にもそれが残っています。
 緒方氏の本名は収二郎ですが、
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