歩き廻り、覚えず溝川《どぶがわ》に落ち入り、折々は死ぬるものもあるとか聞きました。緒方が月の夜に見えぬと、「またモントズクトか」といったことがありました。緒方のいうには、「月夜に散歩していると、何となくよい気持になり、つい夢心持になって歩き廻るのさ。事は違うが、チャンの阿片《あへん》に酔うた心持もこんなものかしら。」(月狂生)
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その前に添えてある与謝野晶子氏の文に、「私が前号のこの欄に月見の事を書きましたら、賀古鶴所先生から早速興味あるお手紙を頂きました。私信ですけれども差支《さしつかえ》がないと思いますから次に載せます。文中の緒方氏は森鴎外先生の「雁《がん》」という小説の中に「岡田」という姓で書かれている医学生です。独逸の留学から帰って早く歿《ぼっ》せられましたが、明治医界の先輩で、今の大阪の緒方医学博士の御一族です」としてあります。
右の賀古氏の手紙は、私にも興味が深いのですが、その中には不審の点もありますので、春にでもなったらお目にかかって、伺って見たいと思っています内に、翌六年の元日の午後、賀古氏は急逝せられて、そのことも出来なくなりました。
賀
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