随分苦労の種と存候。夜深く相成候故|擱筆《かくひつ》仕候。草々不宣。
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    十二月五日[#地から3字上げ]林太郎
   小金井きみ子様
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   賀古氏の手紙

『冬柏《とうはく》』の昭和五年十月号の消息欄に、賀古鶴所《かこつるど》氏が与謝野《よさの》氏に宛《あ》てた、次のような手紙が出ています。
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『冬柏』第七号の消息中に、月夜の村芝居、向島奥の八百松《やおまつ》に催した百選会の帰るさに、月の隅田川を船にて帰られたくだりを拝読して、今より五十年余り昔の事を思い出《い》でました。それは同学中に緒方という温厚な少年がありました。月の夜に柄になく散歩を誘いに来ました。そのまた兄さんは月に酔う人で、或秋の夜に兄弟|両人《ふたり》して月に浮かれて、隅田川より葛飾《かつしか》にわたり、田畑の別なく、ひと夜あるき廻り、暁に至りケロリとして寄宿舎に帰って来たことがありました。独逸《ドイツ》にてかようなのを Mondsucht と称しますが、敢《あえ》て精神病には数えませぬ。月に魅せられて、ついうかうかとさまよい出て、市中または林間田野を
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