《おじ》さん(主人の兄)の所へは行きたくない。どんな暮しでもするから、そのつもりでいておくれ」と、涙をこぼしておっしゃるので、「えゝえゝ、行届きませんが、どうでもして御一緒に過しましょう。その内には子供たちもそれぞれに成人しますから」と申しました。
 この問答を聞いた森の母は涙に誘われて、「それはお前の大手柄というものだよ」といわれ、ついで小倉への手紙にもそのことを書いて、「お前も喜んでおやり、きみ子はお母さんから金鵄《きんし》勲章をいただいたから」といわれたので、それから暫くの間、私は金鵄勲章という綽名《あだな》が附けられました。兄からは名誉を重んじるといわれましたが、金鵄勲章などは随分な負担でした。
 次の手紙も母宛ですが、私のために書かれた一節があるので写して置きました。
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お君さんの安心立命の出来ぬは矢張《やはり》倫理とか宗教とかの本を読まぬ為めと存候。福岡にて買ひし本の内に『伝習録』といふものあり。有触れたる者なれど、まだ蔵書に無き故買ひおき候。これは王陽明《おうようめい》の弟子が師の詞《ことば》を書き取りしものなるが、なか/\おもしろき事|有之《これあ
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