ろの物がぎっしり積上げてあったのですから、見えないのも無理はないと思いました。
けれども人間は勝手なもので、無事な品を喜ぶにつけても、「ほんとにあれは惜しかった。こちらの方ならそれほどでもないのに」などと、勝手をいっていました。
ところがその後その室を整理することになって、全部の品を持出した中に、こんな物があった、そちらのらしい、と寄越《よこ》されたのがそれなのでした。入れて置いた紙の箱は潰《つぶ》れ、上包《うわづつみ》は煤《すす》け破れて、見る影もありませんが、中の物は無事なので、天佑《てんゆう》とはこのこととばかりに嬉《うれ》しく思いました。
それを順々に拡げて見て、幾日かを過しました。人から贈られた書簡ばかりを集めて置いたので、古いところでは福羽美静《ふくばびせい》、税所敦子《さいしょあつこ》、小池直子、松《まつ》の門三艸子《とみさこ》、橘東世子《たちばなとせこ》、松波資之《まつなみすけゆき》、小出粲《こいでつばら》、中村秋香《なかむらしゅうこう》、賀古鶴所《かこつるど》、与謝野寛《よさのひろし》、同|晶子《あきこ》の方々のもの、現存の人でも皆二、三十年前のものばかりです。
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