に、「書生の羊羹とは違いますよ」と答えられました。書生の羊羹というのは焼芋で、それが兄の好物なのでした。
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   兄の手紙

 主人が亡くなって、まだ心の落附かぬ内に、私の家には疎開、焼失、移転などと、次々にいろいろなことがあったので、何をどこへ遣ったか覚えてもおらず、何かと書附けた手帳なども見喪《みうし》なったような騒《さわぎ》ですから、分らぬ物も多いのです。最初から、これだけはと心懸けた品を、三つ四つの包に拵《こしら》えて、その頃はどこが安全ともいわれませんが、親戚《しんせき》にしっかりした鉄筋コンクリートの建築があるので、とにかくそこへ預けました。どうなっても不足はいわぬという約束です。
 その五階の建物も、三階までは罹災《りさい》しました。後でその構内へ落された焼夷弾《しょういだん》を拾い集めたら、幾百とあったそうで、その殻が小山のように積んでありました。落ちた折の恐ろしさが想像せられます。預けた品は一階の隅の物置のような室に入れてあったので、幸い助かったといって、終戦後返されたのを喜びましたが、一箇だけ不足していました。二間続きの広い室で、床から天井までいろい
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