屋の店が出来たので、ついでに見に行きました。店にいた女の人は、同級生のお友達によく似ていましたから、姉さんか、それでなければおばさんだったでしょう。軽焼種というのを売るのです。それは牛皮のようなものですが、焼けば大きく脹《ふく》れるといいます。けれどもいつもそのままで食べました。珍しく大きな軽焼を白雪といいました。握り拳《こぶし》くらいあります。それもおいしいですけれど、本郷には大きな缶がないので、湿るからといって、人数だけ買って帰りました。
 大学の構内を通り抜けて、赤門《あかもん》を出て左へ曲って、本郷の通りへ行きますと、三丁目の角に兼康《かねやす》という小間物《こまもの》の老舗《しにせ》があります。美しい髪飾のいろいろ並べてあるのを、客は代る代る取出させて見たりしています。そうした様子を、右手の横から、神農《しんのう》の薬草を持った招牌《かんばん》が見詰めているようです。その神農の白髪と、白髪の長いのとがお父様に似ているといったら、祖母に笑われました。
 すぐ傍に岡野という菓子屋があります。これも老舗で、店の正面の神棚に、いつも灯明《とうみょう》がきらきらしています。その下の格子
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