に時が立ってしまった。もう誰か拾ったろうと残念がりました。半円札でしたか、一円札ですか。なぜ銭入に入れて行かなかったろう、せめて袂《たもと》にでも入れて行けばよいのにと、祖母が呟《つぶや》きました。
 買物は池《いけ》の端《はた》へ出て、仲町《なかちょう》へ廻ってするのです。その仲町へ曲る辺に大きな玉子屋があって、そこの品がよいというので、いつも買います。買って帰って、そんな話をしているところへ次兄が顔を出して、「あの店では怪しい玉子はきっと皆|煎餅《せんべい》にするのでしょう」といったので、祖母は嫌《いや》な顔をなさいました。その店の玉子煎餅も名代《なだい》で、いつも買ってありました。
 そこから広小路《ひろこうじ》へ出るところに、十三屋という櫛屋《くしや》があって、往来|端《ばた》に櫛の絵を画いた、低くて四角な行灯《あんどん》が出してありました。祖母が切髪を撫附《なでつ》けるのに、鼠歯《ねずみば》という、ごく歯の細かい櫛を使うので、それがあるかと聞きましたが、ありませんかった。黄楊《つげ》の木で造った品ばかりを商う、暗くて古風な店でした。
 広小路へ出て右へ曲った右側に、千住の軽焼
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