さんは、だんだん声高になり、無愛想にもなります。その人は、「どうかお薬をいただかして」と繰返しているようです、お母様が呼んで聞きましたら、「いえ、お宅に家伝のお薬があるでしょうといいます。そんなものはないといっても聞きません。それはあなたが知らないのです。年寄がそういいます。遠方からわざわざ来たのですから、先生のお帰りを待って戴《いただ》いて行くというのです。田舎の人は実に強情《ごうじょう》で困ります」と、さも不平らしくつぶやきます。
「まあそう一概にいわないで、気の済むようにして上げたいものですね」とお母様のおっしゃるのに、傍からお祖母様が、「それは『ろくじん散』をいうのではないかえ」といわれます。
「ほんとにそうかも知れません。聞いて見ましょう」と、その人に逢って聞きますと、やはりそうなのでした。
「よく聞伝えて来て下さいました。お年寄のおっしゃるのは御尤《ごもっと》もです、お国にいた時には随分出たお薬ですから。」
書生さんはそっちのけです。まだ座敷の隅にある百味箪笥《ひゃくみだんす》――今は薬ばかりでなく、いろいろの品の入れてあるその箪笥から、古い袋を取出して、もう薬研《やげん
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