ざっとした物でしょうけれど、幼い私には目新しくて驚かれました。
 薬局は二方|硝子《ガラス》の室で、幾段かの棚があり、大小さまざまの瓶が並んでいました。小さな戸棚が取附けてあって、そこには劇薬が並べてあるので、錠が懸けてありました。丸薬、膏薬《こうやく》などの製剤具もありました。
 丸薬では向島時代が思出されます。いつも夜なべ仕事に拵えるので、お父様がお薬を調合してお出しになると、大きな乳鉢《にゅうばち》でつなぎになる薬を入れ――ヒヨスもはいったようでした――乳鉢で煉《ね》り合せ、お団子くらいのよいほどの固さになった時、手に少し油を附けて、両手で揉《も》んで、右の親指の外四本の指先に少しずつ附けて、左の掌《てのひら》で丸めるのです。かなり熟練が入るのですが、お母様はお上手《じょうず》でした。私などが手を出して見ましても、とかく不揃《ふぞろい》になるので嫌われます。八畳の間の吊《つり》ランプの下でするのですが、その片隅に敷いた床の中で、ばらばらという幽《かす》かな音を聞きながら、いつしか私は睡《ねむ》るのでした。翌日はそれを拡《ひろ》げて蔭干《かげぼし》にし、硝子の大きな瓶に一杯にして置
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