のない時も、桜若葉が青々と涼しそうに長く続いて、その間に掛茶屋の緋毛氈《ひもうせん》がちらちらと目に附きます。川には材木を積んだ筏《いかだ》が流れて来たり、よく沈まないことと思うほど盛上げた土船も通ります。下手《しもて》には吾妻橋《あずまばし》を通る人が見えます。橋の欄干に立止って見下している人もあります。そろそろ山の宿の方に近づきますと、綺麗に見える隅田川《すみだがわ》にも流れ寄る芥《ごみ》などが多く、それでも餌《えさ》でも漁《あさ》るのか、鴎《かもめ》が下りて来ます。
岸へ上った辺は花川戸《はなかわど》といいました。少し行くと浅草|聖天町《しょうでんちょう》です。待乳山《まっちやま》の曲りくねった坂を登った上に聖天様の社があって、桜の木の下に碑があります。また狭い坂を下りると間もなく、観音様の横手の門へ出ます。その辺にはお数珠屋《じゅずや》が並んでいたようです。まず第一にお参りをしようとお母様にいわれて、十八間《じゅうはちけん》というお堂へ上ります。大勢の人々に毎日踏まれて、板敷《いたじき》はすっかり減っています。御本尊の安置してある辺は暗くて、灯が沢山附けてはありますが、真黒な
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