う」と聞きましたら、お父様は、「それは美男葛《びなんかずら》といってね。夏は青白い花が咲くのだ。もう莟《つぼみ》があるだろう。実が熟すると南天のように赤くて綺麗だよ。蔓の皮を剥《は》いで水に浸すと、粘《ねばり》が出るのを髪に附けるのだとさ。それで美男葛というのだろう」とおっしゃいました。
 柿の木もあり、枇杷《びわ》もあり、裏には小さな稲荷様《いなりさま》の祠《ほこら》もありました。竹の格子から外を見ているのと違って、ここでは勝手に遊ばれるので、学校の少し遠くなった位何でもないと思いました。お国を出てから今日まで我慢をしていらっしゃったのですから、お父様はお家の時はいつもお庭でした。

 賑やかな花の頃に、運動場からその花を見上げるばかりで、土手へはそんなに上りません。それでも風が吹くと、運動場は落花で真白になります。私たちは散った花びらを掻寄《かきよ》せて遊びました。女の子たちが続けて休むのを、病気かと思いましたら、掛茶屋へ手伝いに行くのだそうです。雨の日には皆来るので、それが分りました。大抵は近くの子たちですが、渡しを越して来るのも少しはあったようでした。花の咲いている間に、一、二
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