まるで物狂《ものぐる》い扱いにされておりました。その人の物語を終《しま》いまで聞いたものは立ちどころに神隠しにかかってしまうなどと云う噂もあって、都の人達は顔さえ見るのも恐しがっていたようでした。
男3 (男10[#「10」は縦中横]の話につり込まれて、質問する)あの、神隠しの子供達は、その後どこぞで見付かりましたのですか?
男10[#「10」は縦中横] いいえ。あのまま、一向行方わからずなんだそうです。
女1 恐しいことでございますわね、今日も、また何か縁起の悪い啓示《しるし》が空にあらわれたと云っていますから、充分に気を付けないと、いつどんなことが起るかも分りませんわ。
女3 本当にねえ、せっかくの賀茂《かも》の祭だと云うのに、お社《やしろ》にも詣《もう》でないうちから、まあまあ、気味の悪い声を聞くこと。

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吐菩加美 ほッ 依身多女 ほッ
吐菩加美 ほッ 依身多女 ほッ
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女2 何だかあの声はだんだんとこの世のものとも思われぬ調子になって行くではありませんか。……あの調子ではきっともうす
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