っかり神懸《かみがか》っているのですよ。
男6 (大層感心した様子で)さよう、……いや、あの気配《けはい》では、本当にもう心から神になり切っておりますな。身も心もすっかり神がのりうつっている頃なのでしょう。あのまま山へ入って行って魂ごいをすると、隠れた人達の魂が、あのように応《こた》えかえすのだそうです。
男8 (気味悪そうに)一体、どこの山へ行くのでしょうね?
男6 さあ、何でも衣笠山《きぬがさやま》あたりへ行って三日間ほど山籠りをするのだと云ってましたが、……
女2 あら。中御門《なかみかど》の方へ曲って行きますわ。皆さん、御一緒に後をつけて行ってみませんこと? (女3を誘う)ねえ、行ってみましょうよ。
女3 行ってみようかしら。
[#ここから2字下げ]
数人の男女、右手奥へ退場。
験者達の呼ばい声、鈴の音はだんだんと遠のいて行く。……
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
男9 (残っている人達に呼びかけるように)本当に、皆さん、お祭り騒ぎに油断をして、物忌《ものいみ》を怠らないように注意しないと、大変な目に遭《あ》いますよ。ことにあなた方お若い
前へ
次へ
全202ページ中101ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
加藤 道夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング