れが、あなた、驚くじゃありませんか。今度の御相手はまだほんの十七、八のとんだ賤《いや》しい田舎娘《いなかむすめ》なんですって!
女9 まああ!
女10[#「10」は縦中横] なんだ、そんなお噂なら、もうとうの昔に知ってるわ。……では、その大納言様の恋路を妨げる若いお方がひとりいらっしゃるってことは御存知?
女9 あら! 恋仇《こいがたき》?……ねえ、教えて。……それは一体、どなた?
女10[#「10」は縦中横] ふふ。……(云わない)
女5 そう勿体《もったい》振《ぶ》らないで、おっしゃい。
女9 ねえ。……おっしゃいよ。
女10[#「10」は縦中横] ……これは秘密よ。どなたにも饒舌《しゃべ》っては駄目よ。(三人、顔を寄せ、右へ退場)
男9 (右より)何かと云っては、物忌《ものいみ》物忌と口先ばかりはやかましく云っているようだが、こう云うものは、元来、いくら口うるさく云ってみたところで、それに心が伴わなければ何にもならない。まあ、我々のつけているこの葵《あおい》の鬘《かずら》や蘰《かずら》にしてもだ、近頃ではまるで形式的になってしまって、みんな、何のことはない、祭りの飾り[#「飾り
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