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文麻呂 なよたけ。……僕達を信じて下さい。
清原 僕達を信じて下さい。
文麻呂 なよたけ。……あなたには危険が迫《せま》っている。……僕達に信頼して、僕達の云う通りになさって下さい。
清原 大納言様は、あなたを都へ連れて行こうとなさるのです。……大変です。
文麻呂 葵祭の日です。もう半月もありません。葵祭の日には、大納言のお迎えの車が来て、あなたを都へ連れて行ってしまうのです。……なよたけ。もし、そのまま連れて行かれてしまったら、……あなたの一生は滅茶滅茶《めちゃめちゃ》です。
清原 そうです。滅茶滅茶です。………
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けらおとみのりが戻って来た。傍に立って二人の話を聞いている。
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文麻呂 あなたは御存知ないのだ。……都の人間《ひと》達がどんなに汚れ切っているか。表面《うわべ》ばかり華かな文化に飾られ、優雅《ゆうが》な装いに塗りかくされてはいるけれど、人間達はみな我利私慾《がりしよく》に惑《まよ》っている。……「素朴《そぼく》な」人間の心を喪失《そうしつ》してい
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