き、語気強く)あなた達は一体誰なの!
文麻呂 あなたの心からの味方です。
清原 ぼ、僕、清原ノ秀臣って云います。
文麻呂 僕はその友人、石ノ上ノ文麻呂。
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小鳥達は囀っている。木洩日は輝いている。
なよたけは泣き止んだ。彼女の眼はじっと文麻呂の姿に惹《ひ》きよせられている。
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文麻呂 なよたけ。……僕達はあなたを大納言の手になぞ決して渡しはしません。
清原 決して渡しはしません。……
文麻呂 大納言にはれっきとした奥の方がいるのです。
清原 いるのです。……
文麻呂 あなたが大納言のところへなぞ嫁《ゆ》かれたら、それこそ大変な不幸ですよ。
清原 大変な不幸です。……
文麻呂 あなたは汚れ多い都になぞ出るひとではありません。あなたは自然と共に生きるべきひとだ。あなたは、いわば竹の精だ。若竹の精霊だ。あなたは自然の子だ。自然そのものだ。
清原 そうです。そのものです。……
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雨彦が戻って来た。もの珍しそうに傍に立って、二人の話を聞いている。
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[#ここか
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