右に退場)
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なよたけの琴の音、ぴたりと止む。……
同時に土間の敷居《しきい》の所に、石ノ上ノ文麻呂と、清原ノ秀臣が凜然《りんぜん》として立っている。
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文麻呂 大納言殿! 忍びの恋路のお邪魔立てして申訳ありませぬ!
御行 (愕然《がくぜん》として立上る)誰だ!
文麻呂 石ノ上ノ綾麻呂の息、石ノ上ノ文麻呂!
清原 (少々震え声で)……大学寮学生、清原ノ秀臣!
御行 (狼狽《ろうばい》して)何しに来た!
文麻呂 (凜然と)道ならぬ不義の恋路に身をやつしておられる大納言殿を、お諫《いさ》め申しに参りました!
御行 (興奮して、大喝《だいかつ》する)生意気《なまいき》を云うなッ!
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とたんに、右手なよたけの部屋の方から、彼女のヒステリックな叫び声が聞えて来る。……
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なよたけ (声のみ)嫌《いや》です! 嫌です! そんなこと、あたし嫌です!……
御行 (狼狽の極。しばらくは全く惑乱《わくらん》状態。……ややあっ
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